えっ、島国が沈む? 地球温暖化問題と私たちの課題
太平洋の島国の人々との共生をめざして



 2004年6月12日(土)日本キリスト教会館6Fフォークトルームにおいて、表記 の集会が行われました。日本クリスチャン・アカデミー関東活動センター所長 大津健一さんの司会で始まりました。
 昨年放映されたNHKの番組「ツバルの選択」を見て、テーブル毎に自己紹介を し、「もし私がツバルにいたら」をテーマに感想を語り合いました。
 「ツバルの人はとても明るくて、外国から来た人にもニコニコと挨拶するの で、見習って、私たちも互いに言葉を交わして仲良くなりましょう」との行本 さんの導入で語り合いました。「沈んでしまえば明日はないのだから、思い切 って移住する」という方、「お年寄りほどご先祖の土地を離れたくないのでは ないか」という方。ビデオでもやはりお年寄りは「離れたくない」と言ってい ました。

《雀部真理さんの話》(ささべ まり)
1)太平洋との出会い 
 1987年YWCA世界総会でキラキラ生きいきしている女性達に出会う。アフリカ でアパルトヘイトと闘っている女性たちが踊りながら登場したのにはビックリ したり関心したり。パレスチナの女性たちはイスラエルの占領下にある限り平 和はこないとシビアな訴え。そしてもう一組「おっ」と思ったのが太平洋の島 国の女性たち。「核のない太平洋」が彼女たちの課題。独立と非核がセットな んだということがわかった。
 翌年の会議で欠員ができたということでサモアに飛んだ。「正義・平和・被 造物」がテーマの会議だった。太平洋の島々の人々がどのように自然に寄り添 い、自然の恵みを喜んで生活しているか。そこへ先進国が土足で踏み込んで何 をしたかを知った。
2)今回の会議
 主催はWCC(世界教会協議会)& PCC(太平洋教会協議会)。開催地はキリバス 共和国の首都タラワ。テーマは「気候変動に関する正義の問題」。参加者は太 平洋島嶼諸国の教会代表約30人、地域外参加者約10人。受け入れはキリバス・ プロテスタント教会と加盟教会の村々。
 カトリック、セブンスデー・アドベンチスト、バハイ、その他いろいろな教 派が共に参加。
3)キリバスと日本の関係
 真珠湾攻撃直後日本軍が2年間占領していた。タラワにいた日本軍はあまり悪 いことはしなかったようで、戦後手厚いODAもあり、日本に対する悪感情はない。 海域が広く、日本は国策としてキリバスに多くの援助を行っているが、あまり 知られていない。
4)気候変動とキリバスの現状
 ツバルと似ていて、環礁国。一番狭いところは、家の前も後も海。海岸が浸 食されていて、防波堤ともいえない砂袋の積まれているのを見ると、日本の沖 ノ鳥島がお金をかけて守られているのに、生命がかかってるこの国にはそんな お金もないのだとため息が出た。日本が島と島を繋ぐコーズウェイという道路 を工事して、潮の流れが変わったりしているけど、便利にはなった。けれど、 地下水に塩水がまじるようになって、雨期もだんだん長くなっている。
 キリバスとすぐわかる独特の衣服、踊りを見ていると、こうした伝統を捨て て移住しなさいなどと簡単には言えない。
5)「正義の問題」として
 原因を作る者と被害を受ける者がいるという不正義。資源を持っていく北の 国々と取られる南の国々。家のウラもオモテも海の国。しかも温暖化の原因者 ではないキリバス。
 世代間の不正義にも目をやらなければならない。今の若者はラクな生活に慣 れてしまって、元の生活には戻れない。石油が枯渇したとき、この人たちの生 活はどうなるのか。石油の枯渇については、先進諸国で、もっともっと重大視 しなければならないのに、議論は少ない。
 漁業については、日本が大きな船で来て、幼魚まで取り尽くす。便利さの追 求が他国への被害を発生させている。
 キリバスには国連機関もあり国際化された中心部と、昔ながらの生活をして いる周辺部がある。電気もガスもないのがふつう。薪とココナツ殻を燃やして 煮炊きしている。TVが見られるのは中心部だけ。
 子どもたちには智恵もあり、外国の客に対しては、キラキラと好奇心をたぎ らせて質問攻め。こうした人々の生活にマイナスをもたらしている。
 言語は島によって違うが、「土地」という言葉はどこの国でも「子宮」とい う意味を持っている。キリスト教が布教される以前からそういう意味を持った 言葉が存在している。命の源である土地との結びつきは先進国の者にはわから ないのではないか。
 自分で畑を持ってみて、落ち葉や古畳を入れたり石を取り除いたりしている と、「移れ」と言われる人の気持ちがわかる。成田の人の気持ちもわかるよう になった。
 加えて、キリバスの場合、文化的ユニークさを感じる。フィジーを歩いてい ても、キリバスの人だとわかる。スモッキングしたブラウスを着ていたり、踊 りも独特だ。。
 ツナ缶工場にキリバスの人が働きにきていて、踊るのを見た。ポリネシア系 の踊りに見えたが、ミクロネシアの踊りをクリスマスに一日中見ていて、違い に気づいた。移住するということは、アイデンティティを失うということだ。 沈むなら引っ越せばいいじゃないかとは簡単には言えない。
 今回の会議で「オシン・タアイ宣言」(気候変動に関する太平洋教会宣言) が採択された。オシン・タアイとは、キリバス語で日の出のこと。それは希望 の象徴でもある。
 この宣言の中で「私たち人間には、神のつくられたものに畏敬の念と謙遜さ をもって生きる必要があるということです。被造世界に対する神の愛に応えて、 私たちは地球を大切にし、気候変動を助長するような破壊的な活動を制限する よう招かれているのです」(行本尚史訳)と信仰告白をしている。
 具体的には、化石燃料の生産と消費を減らすこと、京都議定書の実施等を政 府や産業界に働きかけることなどが決議されている。
6)持続可能なキリバスのために
 塩水が畑作を難しくしていて、缶詰や輸入加工食品の消費が増え、海岸線に はゴミが集まってきている。パンフルーツの葉は大きくて利用価値が高いのに、 缶やビニールに混ざってゴミになっている。堆肥を作って土を肥やすプロジェ クトを進めながら温暖化をなくすよう国際的に訴えていく生き方をしたい。
7)私にできること
 個人の生活の中でどれくらい循環度の高い生活ができるかやっている。そば で有名な町なので、そばやのカツオだしをもらい受けて鶏のエサや肥料にして いる。こんぶも食べきれない分は肥料にする。
 電化製品もへらせるものがある。
 小さな努力は必要だが、それだけでは世界は変わっていかない。アドボカシ ー(政策提言)を同時にやっていかなくてはいけない。教会学校のための教材 つくりもやりたいと思っている。貧しい中で育って、今便利さを謳歌している 年寄りに昔に戻れと言っても無理だろうから、次の世代の教育に力を入れた方 が効率はいいだろう。
 若い人にガマンしなさいというのは通用しないかもしれない。今の人は快・ 不快で物事を判断するから、ナマの交わりの方が心地いいとか、ゲームより違 う遊びの方が心地いいとかにならないと変われないだろう。
 「フィジーの子はかしこいよぉ」っていうと、子どもたちは「エ?」という 感じで話をきいてくれる。パソコンの賢さとナマの賢さは違うというのは文化 創造だ。そのことをCS等通じて言い続けたい。
 こうした学習の成果として、自分が人と違っていても正しい道を歩めるとい う子に育ってほしい。今は自分の意見を言えない子が育ってしまっている。
 また、私たちがいくらチマチマ節電しても、爆弾1発落ちたら、ものすごく CO2がまき散らされる。平和と環境をトータルに考えていく必要がある。        (文責:高柳)

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